米軍川上弾薬庫(東広島市)近くの河川水・地下水から、国の暫定基準値50ng/lを大きく超える有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)が検出されている問題は、同じ米軍基地を抱える岩国市民にとって極めて関心の高いものとなっている。東広島市は、広島県と東広島市の質問に対して中国四国防衛局から「米軍が1991年から2009年の間、PFOSを含む旧式の泡消火薬剤を使用した消防車の点検及び訓練を行っていた」という回答があったことを9月6日明らかにしている。汚染原因が米軍基地である可能性は高まったと言わざるを得ない。米軍基地では横田基地、嘉手納基地、普天間基地の周辺でも高濃度のPFOS,PFOAが検出され住民の健康被害が指摘されている。
PFOS・PFOAは難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質があり(環境省:PFOS,PFOAに関するQ&A集)、自然界には存在せず、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」の「第一種特定化学物質」に定められ、人の健康を損なうおそれがあるとされるものである。
米軍は「PFASを含有する泡消火剤AFFFを艦船と世界中の基地に導入した」(岩波ブックレット「永遠の化学物質 水のPFAS汚染」)。そして長年そのAFFFを使用してきた。岩国基地でもPFASを含む泡消火薬剤を過去長期間使用してきたことは当然と考えられる。岩波ブックレット「永遠の化学物質 水のPFAS汚染」13ページには、「1997年付きの海兵隊岩国基地に関する報告書は、消防車両が基地の排水溝に数千リットルの消火剤を流したことに触れ、AFFFは水質を害すると注記している」との記述がある。また我々が得た情報では、2021年12月11日、空母艦載機格納庫下のタンクからバキュームカーに汚水を移す際、バキュームカーからAFFFを多量に含む汚水があふれ出し、付近の地表を汚染したとのことである。
平和団体「平和を求める元軍人の会」のパット・エルダー氏は本年8月20日岩国市にて、本年5月22日岩国基地遊水池とつながる今津川河口付近の水門付近で採取した海水からPFOSが63.4ng/l、PFOAが25.9ng/l、PFHxS27.5ng/l検出されたことを明らかにした。PFOS,PFOAは合計89.3ng/lとなり、国の暫定基準値の1.8倍にも及ぶ。またPFHxSは今年2月より「第一種特定化学物質」に指定されている。
このような事情を鑑みるとき、岩国市としても岩国基地に関係するPFASの情報収集・調査は必須と考えられる。以下申し入れる。
記
- 岩国基地におけるPFAS含有のAFFFの保有履歴・使用履歴を米軍・自衛隊ともに明らかにさせること。
- AFFFの漏出事故についての履歴を米軍・自衛隊ともに明らかにさせること。
- 岩国基地周辺の河川・水路・地下水・土壌のPFAS検査を行うこと。